苦しみを全て巻き返すチャンス

記録<教員時代>

 今日でこの街ともお別れか…。異動に伴い引っ越しすることになった私は、業者を利用せずに、何日もかけて引っ越し作業を行っていました。(軽トラックを貸してくださった前任校の事務室長には、在籍中も大変お世話になり、本当に感謝しかありません。)最後に、お別れになる部屋の鍵を閉めて、その鍵をポストに投函して、何とも言えない大きな達成感に浸っていました。というのも、その大きな達成感には理由があったのです。

 教員をやられている方なら納得していただけると思いますが、教員の異動先が決まるのはなかなかギリギリです。2月半ば過ぎに異動先がおよそ分かった(新採時は3月過ぎでした…)ので、すぐに部屋を探しに行ったものの、3月中に入居できてピンとくるような物件はなく、4月上旬入居可の物件に決めたのです。つまり、異動してからも元の家から通勤(片道1時間半)していましたので、やっと引っ越し作業が終わるということで、ドーパミンが相当分泌されたのでしょう。

 新居に向けて出発しようとしたとき、車の鍵が開かないのです。私はずぼらな性格なので、1週間前から車のスマートキーの電池交換アラートが出ていたのに放置してしまい、このタイミングで電池が切れてしまったのでした。時間は0時を回っていたので、これまで数回しか行ったことのない24時間営業のドラッグストアで電池を買うことにしました。店に着いて電池を購入、車内で電池を交換して一息つき、ふと前を見ると、奇抜な髪型をした青年がフロント越しに私を覗き見ていました。5秒ほど考えたとき、ある生徒(以下、Aとします)のことを思い出してすぐに車を出ました。

 「やっぱり先生ですよね?車でわかりました!」

 Aは数年前に担任をしていた、それはもう元気な生徒でした。すごく人懐っこくて、友人思い、かと言って繊細で、義理堅いのにしょっちゅうやらかしてしまう。本にして卒業証書と一緒に渡したいほど、生徒指導の記録が束になっていて、同じ学年団の先輩と面白いやつだったと笑いました。私は仕事のことや生徒のことで何かあると、家でも休日でも考えてしまうタイプ(特に教員だと同じタイプの方多いのでは…)なので、Aに費やした時間も相当多かったのです。

 私が「今日でこの街が最後でこの店も寄る気はなかった」と言うと、Aも「俺もこの店めったに来ないから奇跡っすね」なんて言って、相変わらず調子良いやつで安心したのでした。ひとしきり挨拶を交えた後、Aに最近の調子について聞くと、「仕事一生懸命やっていますよ!卒業してから先生に言われたこととか迷惑かけたこととか結構考えます。あ、在学中もちゃんと考えてましたよ!本当にありがとうございました!」なんて言うから、部屋を出た時よりもドーパミンが出てたと思います。

 最後に写真を撮って、Aを見送ると、「ああ、教員って良い仕事だなぁ、本当に。」と呟いてしまって、周囲をキョロキョロしたあと頭の中で[一人で何言ってんだ、きつすぎる]とツッコミをいれて、車に乗り込みました。

 日々教員の仕事をしていると、もちろん楽しかったり、うれしかったりすることもありますが、しんどかったり、腹ただしかったり、悲しかったりすることの方が多い先生は少なくないと思います。しかし、その苦しみを全て巻き返すやりがいや場面に出会えるチャンスが多いのもまた“教員”という仕事ではないでしょうか。

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